さすらい人幻想曲

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晩秋の嵐山①宝厳院と宝筐院

11月末に京都の嵐山に行ってきた。いまはもう12月も上旬でほどんどの場所で紅葉の見頃は終わっているが、私が行った時は、晩秋。紅葉の盛りか、やや散りはじめという季節だった。

平日にもかかわらず、紅葉シーズンで、ここは原宿かと思った。あるいは、まるで休日のUSJ(ユニバーサルスタジオ)みたいな混雑だった。歩道は人で溢れ、車道は車が前に進まず、駐車場も立地が良いところはすべて満杯。私は電車だったので、駐車場の心配をしなくて済むのが助かった。やはりこの時期の京都を舐めたらいけない。しかし嵐山を背景にした渡月橋を見ると、大阪から、京都までわざわざやって来たという気持ちの高まりを感じる。やっぱり嵐山はいい。

昔から私は何度も嵐山に行ったことがあるのに、宝厳院と宝筐院には行ったことがなかった。常時拝観を受け付けているわけではないのと、昔は紅葉にそれほど興味がなかったためだ。観光シーズンでない真冬に嵐山に行くと、宝厳院の門は固く閉ざされている。秋の嵐山というと、天龍寺二尊院、常寂光寺、祇王寺には行ったことがあったが、今回訪れた、宝厳院、宝筐院には行ったことがなかった。

京都に来ると、無性に食べたくなるもの。にしんそば。にしんそばを食べたくなる。まだ何も紅葉を見ていないのに私は既に空腹で、その辺にあった蕎麦屋に入った。にしんそばの料金は大体800円から1300円くらいで、こちらの店では1000円だった。何の変哲もない、グーグルマップにも載っていないような小さな店だが、とても美味しかった。意外だった。蕎麦はもちもちの生っぽい麺がしっかり茹でてあり、出汁は京風に薄めだった。他の土地ではあまりない、山椒の風味が最高だった。

宝厳院に向かう途中、通り道に天竜寺塔頭の向源寺が公開されていた。普段は公開されていない本堂では、竹内栖鳳上村松園などの作品が飾られているほか、幕末期の禁門の変に際し、長州藩士が試し切りしたという刀傷が本堂内の柱に多数残っている。毘沙門堂毘沙門天は素晴らしい仏像で、元々は比叡山の無動寺にあったものを開山に際し、移したものと言われている。

宝厳院の受付では、人だかりができていたが、向源寺とセットの拝観券を持っていたため、人だかりをスルーしてお寺に入ることができた。

宝厳院は、天竜寺の塔頭寺院で、室町時代創建。元々は上京区にあったが、応仁の乱で焼失した。その後、私が先刻訪れた向源寺内に移転した後、さらに現在の地に移転した。

宝厳院には『獅子吼の庭』と呼ばれる回遊式庭園があり、その庭園が紅葉の名所となっている。お寺でいただいたパンフレットによると、「獅子吼」とは「仏が説法する」ことで、庭園内を散策することで、自然を感じ、人生の真理を肌で感じる、癒しとなる旨が書かれている。

宝厳院の後は、天龍寺がすぐ近くにあるが、今回は見送る。天龍寺には何度も行ったことがあるからだし、時間の余裕がそれほどなかった。

山陰本線の踏切を渡り、清涼寺(嵯峨釈迦堂)まで到達する。清涼寺には後で行くことにして、先に宝筐院に向かう。

宝筐院は、平安時代白河天皇によって建てられ、応仁の乱以後に衰退。明治の初めに廃寺となったが、大正時代に楠木正行菩提寺として再興される。宝筐院は嵐山の中心部からはやや離れているためか、天龍寺付近や宝厳院ほどの混雑でなかった。受付を過ぎると、細い参道が紅葉のトンネルみたいになっている。

書院から本堂の周辺には回遊式庭園が広がっている。宝筐院は、圧倒的な紅葉の総量で、まるで酔ったみたいになる。

圧倒的な紅葉。紅葉の名所と言われるところでも、(美しさは別として)意外に紅葉自体の規模が少なかったりする。しかし、宝厳院と宝筐院の紅葉はすごかった。

◆今回の撮影に使用したカメラ

◆今回の撮影に使用したレンズ

Carl Zeiss Touit 1.8/32 X-mount

Carl Zeiss Touit 1.8/32 X-mount