さすらい人幻想曲

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奈良の紅葉2017②長谷寺

室生寺を後にして、約40分後、私は長谷寺の回廊を歩いていた。

私は長谷寺に紅葉というイメージを持っていなかった(私だけか)。長谷寺は西国三十三ヵ所の札所ではあるが、春の桜や牡丹の季節には混雑するかもしれないが、平日で、季節も肌寒くなってきた晩秋なのでおそらく空いているだろうと勝手に思って、行ってみたら、かなり混雑していた。参道は、人、人、人。また、長谷寺付近には有料の駐車場がいくつかあるが、最も近いところはかなり混雑しており、あと1時間遅ければ満車だったはずだ。

長谷寺は、室生寺と比べると、混雑の度合いが違う。西国巡礼に加え(観光バスで来る)、特別拝観、おまけに紅葉の名所だった。

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長谷寺では12月3日まで、『本尊大観音尊像秋季特別拝観』として、本堂内の拝観が許可されていた。説明の中では、十一面観音のお御足(おみあし)に直接触れてお参りができるとされている。拝観料は入山料と別に1,000円だった。さすがに別料金で1,000円とは安くないので、全員が拝観しているというのではなさそうだった。私は、紅葉と、特別拝観が目当てだったので、迷わず、拝観料を支払い、本堂に入った。清め用の砂みたいなもので両手を清めた後、観音菩薩と縁を結ぶための「五色線(ごしきせん)」をいただく。それを左手首に結んで、薄暗い本堂内を進む。すぐに普段は遠くから眺める十一面観音の真下に出る。幸い、私が行った時にはそのスペースに誰もおらず、私だけで素晴らしい十一面観音を独占することができた。

ここに来る前は「仏像の足に触ることが何になるのか」と思わないわけではなかったが、その薄暗い空間に一人で仏像と対峙してみると、これがあまり味わったことのないような特別な体験だった。お参りの作法にあるように、私は十一面観音のお御足に触れる。無意識に両手で触れ、撫でる。お寺や神社などでお祈りをするとき、通常は家族の安全だとか、月並みなことを祈るものだが、撫でている間、無心だった。無の状態だった。手を放すと我にかえる、というほど没入していたわけでもないが、その時は、他に雑念がなく、確かに無心で、十一面観音のお御足に触れていた。そういう状態は普段あまりないが、こういうのも仏縁と言えるのかもしれない。

五重塔。昭和29年に、戦後の日本で初めて建てられた。昭和の名塔と呼ばれている。均整の取れた美しい姿だ。

紅葉もちょうど見頃だった。今年は例年以上に紅葉を楽しんでいる。


◆今回の撮影に使用したカメラ